日本歯周病学会会誌
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個人追跡調査による長崎県小離島の口腔状態に関する疫学的研究
う蝕, 歯周疾患, 欠損補綴物の3年間の推移
谷 芳子谷 真彦阿部 嘉裕村上 浩典長田 豊加藤 伊八
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1996 年 38 巻 3 号 p. 319-329

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抄録

平成2年度に長崎県の小離島で無歯科医師地域である崎戸町江ノ島および平島の成人を対象として, う蝕, 歯周疾患, 欠損補綴物の診査を中心に歯科検診を行った。この検診結果をもとに個人および集団を対象に歯科保健指導を行い, 3年後の平成5年度に再度検診を行った。歯科診療施設への通院が困難な地域にもかかわらず, 治療勧告を行った人の60%は, 歯科治療を受診した。両島の住民の流動性が低い特徴を生かし, 個人追跡調査により3年間の口腔内の変化を調べた。3年間ではあるが口腔内の状態は大きく変化していた。う蝕や欠損補綴物に関しては悪化した人より改善した人の割合が上回ったが, 歯周疾患に関しては悪化した人の割合が改善した人を上回った。これは両島で専門的な歯周治療が必要なCPITNコード値3以上の人の割合が平成2年の時点で既に70%以上であったこと, および歯周治療はう蝕や欠損補綴の治療と比較して頻繁な治療回数が必要であるためと考えられる。江ノ島および平島は離島で, しかも無歯科医師地域であるために, 歯科治療を受けるのが極めて不利である。したがって歯周疾患を予防するためには受診者に対してモチベーションを行うだけでなく, CPITNコード値2以下の時点で除石等を積極的に行い, 進行を予防することが重要であると思われる。

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