2002 年 63 巻 5 号 p. 1162-1165
今回著者らは,稀な病態である胃切後の胃空腸結腸瘻の再発例に対し,保存的治療にて改善した1例を経験したので報告する.症例は82歳,男性.主訴は腹痛,食欲不振でした. 37歳時に胃潰瘍にて胃切除術, Billroth-II再建を受けており, 80歳時には吻合部潰瘍による胃空腸結腸瘻をみとめ,胃空腸結腸部分切除術を受けている. 2000年5月より主訴を認め,上部消化管内視鏡検査で吻合部空腸側の潰瘍底の中心に瘻孔をみとめ,その奥に結腸粘膜が観察され,空腸結腸瘻と診断された.点滴,内服治療を中心とした保存的治療にて経過観察を行ったところ,次第に潰瘍は改善傾向を認め,入院54日目の注腸検査で空腸結腸瘻の閉鎖が確認された.その後経口摂取開始とし,経過良好にて退院となった.現在再発の徴候は見られていない.
手術困難例などでは,手術を行わず保存的治療も有効な治療法の1つになり得ると考えられた.