2002 年 63 巻 10 号 p. 2494-2498
腸重積を発症した虫垂粘液嚢胞腺癌の1例を経験した.症例は79歳の男性で,慢性腎不全のため透析施行中.旅行中透析を受けた病院で腹痛を訴えた.当院紹介入院となり,腹部CTでmultiple concentric ring sign,腹部超音波検査でtarget like appearanceを描出し回腸末端から上行結腸領域での腸重積症が疑われた.手術では,虫垂根部に弾性硬な腫瘤を触知し,これが先進部となった腸重積症と診断した.重積部を用手的に整復した後,虫垂腫瘍を確認したためD2リンパ節郭清を含む回盲部切除術を施行した.虫垂腫瘍は病理組織学的にはmucinous cystadenocarcinoma (se, ly0, v0, n (-))であった.虫垂原発の粘液嚢胞腺癌が先進部となり,成人腸重積症を発症した報告例としては本邦第4例目である.