2002 年 63 巻 12 号 p. 2938-2942
症例は66歳,女性. 2000年9月頃より心窩部の違和感を覚えるようになった.同年10月下旬黒色便を主訴に当院を受診,胃内視鏡にて胃体上部に超鶏卵大の腫瘤を認め入院,諸検査より進行胃癌と診断した.入院後も腫瘍からの出血が続き,繰り返しの輸血を要する状況が続いたため手術を施行した.腫瘍の肉眼的な漿膜浸潤は認めなかったが, 2群までのリンパ節腫大が顕著であったため, T2 (SS) P0H0N2, stage IIIaと判断し,胃全摘出術, D2郭清を行った.腫瘍は柔らかい組織に覆われた1型の病変で,大きさは10.5×8×2cmであった.病理組織学的な検索では低分化癌と絨毛癌が混在しており両者に組織学的な移行を認めた.術後約3カ月で,広範囲の肝転移巣を認め,血中のHCGβサブユニット値は386.2ng/mlと顕著に上昇していた.化学療法は行わず,患者は術後約6カ月で癌死した.