日本臨床外科学会雑誌
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Choledochoceleに対する内視鏡的乳頭括約筋切開術の長期予後の検討
小田 斉中村 光成植木 敏幸佐田 正之大塚 隆生川本 雅彦田中 雅夫
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2003 年 64 巻 5 号 p. 1065-1070

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抄録

先天性胆道拡張症のなかでも極めて稀とされるcholedochoceleに対する内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)の長期予後を検討した.対象は男性2例,女性3例で年齢63~96歳(平均81.2歳)であった.内視鏡的逆行性胆道膵管造影で総胆管終末部に嚢胞状拡張を認め,本症と診断された.全例が胆管炎症状を呈しており,胆汁うっ滞の解除を目的にESTを施行した. 96歳の男性例は診断時にすでに乳頭部癌を合併しており,内視鏡的ステント挿入術を行ったが14カ月後に癌死した.他の4例はEST後に嚢胞は速やかに消失し, 35~110カ月(平均64.6カ月)の観察期間で胆管炎や膵炎症状はなく,長期予後は良好であった.本症と発癌の因果関係は不明だが,嚢胞内の胆汁・膵液うっ滞による癌化機序が推察される. ESTでうっ滞を解除すれば癌化のリスクは減少し,外科的嚢胞切除は不要と考えられる.しかし, EST後も発癌の可能性を完全には否定できないため,厳重な経過観察は必要である.

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