2003 年 64 巻 10 号 p. 2459-2462
十二指腸球後部潰瘍狭窄による嘔吐により腎前性急性腎不全をきたした稀な症例を経験した.症例は34歳男性で,当科受診3日前より頻回の嘔吐,全身倦怠感および呼吸困難が出現したため救急車にて来院した. 6年前に十二指腸潰瘍に対して保存的治療を受けた既往歴があった.初診時に, BUN 68.5mg/dl, Cr 6.8mg/dlと高値であり,脱水による腎前性の急性腎不全と考えられた.血液ガス分析では,嘔吐による胃液の喪失が原因と考えられる代謝性アルカローシスの所見を示していた.乏尿に対して,持続的血液濾過法を行いながら全身管理をすることにより,急性腎不全およびアルカローシスの状態は改善した.胃内視鏡検査を施行し,十二指腸球後部に高度の狭窄を認めた.十二指腸潰瘍による瘢痕狭窄と判断し,第34病日目に幽門側胃切除術(Billroth II法)を施行し,術後経過は良好であった.