日本臨床外科学会雑誌
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腹部エコー所見が悪性疾患との鑑別に有用であった,大網脂肪織炎の1例
増成 秀樹大瀧 修司遠藤 格土井 卓子西山 潔嶋田 紘
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2003 年 64 巻 2 号 p. 479-483

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抄録

症例は56歳,男性.右上腹部痛,食欲不振を主訴に入院した.入院時右上腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し, WBC 13,000/μl, CRP 18.4mg/dl,腹部エコーにて腹壁直下に3.2×2.4cm大,後方エコーの増強を伴う膿瘍様のhypoechoic lesionを認めた.絶飲食,抗菌剤投与にて症状は改善し,腫瘤は画像上充実性に変化した.その後腫瘤の大きさは変化せず,悪性腫瘍を否定できないため手術を施行した.腫瘤と周辺組織との癒着は強固であったため,腫瘤切除,回腸・横行結腸部分切除,腹壁合併切除術を行った.病理組織所見より大網原発脂肪織炎と診断した.
大網原発脂肪織炎の本邦報告例は本例を含め14例と稀な疾患である.多くは術前診断が困難で急性腹症・悪性腫瘍の疑いで手術が行われている.本症例で観察された,腫瘤内部の性状の経時的変化が本疾患の診断に有用と考えられた.

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