日本臨床外科学会雑誌
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T2, T3胃癌根治手術例における大網・網嚢温存の意義に関する検討
渡辺 直純梨本 篤藪崎 裕瀧井 康公土屋 嘉昭田中 乙雄
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2004 年 65 巻 10 号 p. 2570-2574

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抄録

大網・網嚢切除の意義を検討するためT2, T3胃癌症例を大網温存群と大網切除群に分け,遠隔成績,手術時間,出血量,術後入院期間,術後合併症,再発形式について検討した. 1992年から2001年に手術を施行したT2, T3胃癌787例を対象とした. Retrospectiveな検討であり,切除群の方が温存群と比べ明らかに進行した症例が対象となっている.大網温存群では有意に手術時間が短く,出血量は少なく,術後入院期間が短かった.また,膵炎,腸閉塞などの術後合併症も少なかった. 5年生存率はT2大網温存群85.4%, T2大網切除群74.6%, T3大網温存群60.2%, T3大網切除群50.5%と大網切除による有効性は認めなかった.腹膜再発はT2大網温存群2.4%, T2大網切除群5.0%, T3大網温存群10.0%, T3大網切除群23.2%であった. T2, T3胃癌症例の5年生存率,再発死亡例の検討で大網温存による不利益はなく,大網切除による腹膜再発の予防効果は期待できない可能性が示唆された.また,手術侵襲,術後合併症においても大網温存による有益性が認められた.

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