2005 年 66 巻 6 号 p. 1252-1255
今回われわれは当院にて経験したHIV陽性患者に対する手術症例8例について報告するとともに,術後合併症の頻度を術前CD4陽性T細胞数別に検討した.当院にて経験したHIV陽性患者に対する手術症例のうち術前CD4陽性T細胞数が500/mm3以上である通常の手術適応の2症例, 200~499/mm3である厳格な手術適応の1症例は術後合併症を起こすことなく経過した.術前CD4陽性T細胞数が199/mm3以下の手術禁忌の値であった4症例のうち2症例に術後合併症を起こし,特に手術絶対的禁忌の値であった1症例は,手術創が治癒せず原病死した.残りの2症例は術後経過良好であった.術後合併症は術前CD4陽性T細胞数が少ない症例に発生しやすいが,術前CD4陽性T細胞数が手術禁忌である症例においても良好な経過を得ることもある.患者のQOLを考慮し,状況に応じて手術適応を決めることも大切であると考えられる.