今回我々は頬粘膜に生じ, 術前動注化学療法を施行した有棘細胞癌の1例を経験した。患者は66歳男性, 初診の1年半前より右頬粘膜に腫瘍を自覚し, 近医での生検にて有棘細胞癌の診断に至った。当科初診時, 右頬粘膜から口角に径3.5cmの腫瘍を認め, 全身精査の結果転移を認めず, T2N0M0 Stage IIと診断した。根治性とQuality of lifeを考慮し, 術前動注化学療法と手術療法併用による治療を行った。Cisplatin 100mg/m2による超選択的動注療法により腫瘍は著明な縮小を認め, 侵襲の少ない手術を施行出来た。超選択的動注化学療法は従来, 主に手術不能例に対して放射線照射との同時併用で施行されているが, 手術可能でかつ再建が困難な症例に対して患者のQuality of lifeを考慮する縮小手術の点から, 術前療法としても期待出来ると考えた。
