症例は72歳女性である.糖尿病加療中であった.腰痛,発熱が出現,その後意識障害をきたし来院した.急性腎盂腎炎をみとめ,頭部MRIで側脳室後角に炎症性浸出物によると思われるニボー形成が,髄液検査で多核球優位の細胞数増多がみられ,細菌性髄膜炎と診断した.メロペネム,セフトリアキソン,バンコマイシンを投与していたが,尿・血液培養からESBL産生大腸菌が検出され,メロペネム,ゲンタマイシン静注およびゲンタマイシン髄注に変更した.神経症候は改善傾向であったが,脊椎炎の合併が判明,レボフロキサシンに変更したところ,炎症所見は改善した.ESBL産生大腸菌は,市中発症髄膜炎ではまれであるが,原因菌として念頭に置く必要があると考えられた.