日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
第53回日本老年医学会学術集会記録〈シンポジウム4:高齢者の終末期の医療およびケア:「立場表明」10周年にあたって〉
4.「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」の現状に関する調査研究
植村 和正
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2012 年 49 巻 1 号 p. 75-78

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抄録

目的:2001年の表明後約10年が経過した「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」(以下,「立場表明」)の現時点での実現度,今後の課題などを明らかにする.方法:日本老年医学会の名誉会員・特別会員・役員・代議員(775名)を対象に自記式アンケート調査を郵送で行った.質問項目は,(1)「立場表明」の個々の立場は実現されているか否か(「概ね実現されている」,「かなり実現されている」,「あまり実現されていない」,「ほとんど実現されていない」の4段階から選択),(2)「立場表明」に追加すべき事項はあるか,あれば何か,(3)「高齢者の終末期医療およびケア」に関して,老年医学会での倫理的検討を通して,ガイドラインなどの作成が必要と思われる処置や事項は,(4)その他:自由記載.結果:回収率は約33%(255/775名)であった.(1)立場-8(医療者の実践的教育),立場-9(国民に対しての「死の教育」),立場-10(社会制度的支援),立場-11(研究の推進),立場-12(国民の声を聞くシステム),立場-13(立場表明の妥当性検証)は,実現度が低い(70%以上が「あまり実現されていない」および「ほとんど実現されていない」と回答)と認識されていた.一方,立場-1(高齢者差別への反対),立場-2(個々の価値観や思想・信仰の尊重),立場-3(QOLの維持・向上への配慮)は50%以上が「概ね実現されている」および「かなり実現されている」と回答された.(2)今後「立場表明」に追加すべき項目として,事前指定書(死ぬ権利を含む),経済的要因,死の教育等が挙げられた.(3)ガイドラインが必要な項目としては,胃瘻を含む栄養療法が最も多く,人工呼吸器,輸血,透析等,が続いた.考察:現在でも「立場表明」の意義は依然として高く,老年医学会会員の意見の集約による修正および改訂が求められていると考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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