2005 年 45 巻 4 号 p. 343-349
目的. 高齢者肺癌患者の受診実態を明らかにする. 方法. 1985年から2000年に当科で診療を行い, 北摂地域在住の肺癌患者537例 (自験例) を対象とし, 同地域の年齢階級別人口から期待肺癌罹患数を求め, 75歳以上の肺癌患者の割合について比較検討し, また15歳ごとの年齢階級別に当科への受診率を求めた. さらに, 適切な医療機関を受診していないと考えられる高齢者肺癌患者の割合 (非受診率) を求めた. 次に, 同地域での2020年までの期待肺癌罹患数および, 適切な医療機関を受診しない高齢者肺癌患者数を予測した. 結果. 期待肺癌罹患数と自験例の高齢者肺癌患者の比率はそれぞれ35.8%, 19.2%で, 自験例が有意に少なかった (p<0.0001). 非受診率は57.4%であった. 高齢者肺癌患者の比率は1985年の32.0%から2020年には57.2%になると予測され, 2020年には適切な医療機関を受診しない高齢者肺癌患者は全肺癌患者の32.9%を占めると予測された. 結論. 将来, 北摂地域では肺癌患者の主体は高齢者となり, 適切な医療機関を受診しない肺癌患者は3人に1人になる. 高齢者肺癌患者の適切な診療指針の策定が急がれる.