日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
空置直腸に発生した放射線誘発直腸癌の1例
川崎 敬次郎向川 智英藤井 久男小山 文一中川 正内本 和晃大槻 憲一中村 信治中島 祥介
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2011 年 44 巻 5 号 p. 617-623

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抄録

 症例は83歳の女性で,21年前に子宮頸癌で化学放射線療法が施行され完全寛解に至った.その翌年に放射線腸炎,直腸膣瘻を発症しS状結腸に双孔式人工肛門が造設された.今回,自然肛門からの下血を主訴に来院し,注腸,内視鏡検査で空置された上部直腸右壁に潰瘍を伴った隆起性病変を認め,生検で腺癌の診断を得た.手術はハルトマン手術を施行した.切除標本で腫瘍は3型進行癌で,切除腸管は放射線腸炎と空置による廃用性萎縮のため管腔が著明に狭小化していた.組織学的には腫瘍部は漿膜に浸潤する粘液産生著明な腺癌からなり,非癌部の背景粘膜にはcolitis cystica profunda(CCP)やp53,Ki-67陽性のdysplasiaを伴った放射線腸炎の病理組織像が認められた.本症例は放射線腸炎に伴うdysplasiaを背景に空置直腸に発生した放射線誘発直腸癌と考えられたので文献的考察を加え報告する.

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