2010 年 71 巻 5 号 p. 1170-1174
症例は60歳,男性.主訴は心窩部痛.内視鏡検査では前庭部に全周性2型病変を認めた.腹部造影CTにて胃壁の肥厚,周囲リンパ節の腫大,門脈腫瘍塞栓を認めたが,肝転移はなかった.腫瘍マーカーはCEA 17.9ng/ml,CA19-9 130U/mlと上昇を認めた.幽門側胃切除を施行し,術中所見では右胃大網静脈から上腸間膜静脈,門脈内に腫瘍塞栓を認めたため切除・再建した.組織学的には胃腫瘍は中分化管状腺癌で腫瘍塞栓も同様の所見であり,リンパ節転移も認めた.術後S-1による化学療法を施行し,術後5年7カ月の現在無再発生存中である.門脈塞栓を伴う胃癌は予後不良とされるものの,他の遠隔転移がない場合には切除による長期生存が期待できる.