日本泌尿器科学会雑誌
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原著
局所浸潤性膀胱癌に対する膀胱温存を目的とした動注化学療法の検討
鷲野 聡平井 勝寺内 文人松崎 敦小林 裕松浦 克彦
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2009 年 100 巻 3 号 p. 486-494

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抄録

(目的)局所浸潤性膀胱癌に対して膀胱温存を目的として動注化学療法を行い, その治療成績を検討した.
(対象·方法)局所浸潤性膀胱癌の34例(T2=25例, T3=9例)に対して, 動注化学療法を行った.化学療法は, シスプラチン(100mg/body)とアドリアマイシンもしくはピラルビシン(50mg/body)の動脈内注入を用いて, 4週間毎に2サイクル施行した.治療効果判定はTUR, 尿細胞診, CT, MRIを用いて行った.4例は動注化学療法と放射線療法を併用した.
(結果)34例中, 12例(35%)がcomplete response, 24例(70%)がobjective responseであった.平均観察期間28.7カ月の間に, 5例が局所浸潤癌の再発, 1例が遠隔転移を来たした.5年癌特異的生存率は69.3%であった.膀胱温存症例は19例(56%)であった.grade 3以上の副作用は, 血液毒性が 5 例(15%), 消化器毒性が 3 例(9%)であった.治療成績に影響を及ぼすrisk factorは, 腫瘍径>20mm, 多発腫瘍, 臨床病期≥cT3であり, Risk factorが1個以下の症例の治療成績は, 奏効率=75~100%, 膀胱温存率=71~75%, 5年癌特異的生存率=83%であった.Risk factorを2個以上有する症例の治療成績は, 奏効率=50~58%, 膀胱温存率=25~42%, 3年癌特異的生存率=0~69%であった.
(結論)局所浸潤性膀胱癌に対する動注化学療法は, risk factor(腫瘍径>20mm, 多発腫瘍, 臨床病期≥cT3)が少ない症例に対しては有効な治療と思われたが, risk factorが多い症例は治療成績が不良であり他の治療法を選択するべきと思われた.また, 高度の副作用は少なく比較的安全な治療法と思われた.

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© 2009 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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