日本臨床免疫学会会誌
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総説
ヘムオキシゲナーゼと生体防御機構;抗炎症治療のパラダイムシフト
谷内江 昭宏
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2007 年 30 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

  ヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase ; HO)はヘム代謝に関わる酵素であると同時に,細胞を酸化ストレスによる傷害から守る細胞保護蛋白である.HOの内,誘導酵素であるHO-1を欠損する症例の病態解析により,このようなHOの働きが特定の細胞の保護にとどまらず,多様な組織や臓器における細胞保護に関与していることが示された.また,腎組織や腎由来細胞株を用いた検討では,HO-1蛋白が特定の細胞に局在していること,それらの細胞ではHO-1産生が特に重要な意味を持つことが示唆された.さらに末梢血単球を用いた解析では,特定の単球亜群で恒常的にHO-1蛋白が発現していること,これらの単球が急性炎症疾患で増加することが示され,単球/マクロファージによるHO-1産生が炎症制御に重要な役割を果たすことが明らかとされた.一方で,HO-1遺伝子導入により過剰にHO-1蛋白を発現させた場合には,むしろ細胞傷害を促進する可能性があることも示され,生体内ではHO-1産生の局在や量が巧妙に制御されていることが示唆された.最近の報告では,HO-1蛋白が制御性T細胞による免疫制御に深く関わっている可能性も示されており,HO-1産生の誘導を標的とした介入が多様な炎症性疾患に対する新たな治療戦略の一つとして期待される.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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