2007 年 29 巻 3 号 p. 479-482
症例は75歳男性. 既往歴に高血圧, 糖尿病がある. 起床時よりふらつきを自覚し当院に紹介入院した. 入院時, 眼球運動は左方視時に右眼の内転障害と左眼の眼振を認めたが, 輻輳反射は保たれていた (MLF症候群). 左上下肢に協調運動障害を認め, 歩行は独歩可能であったが, 軽度開脚歩行で左へ偏移する傾向にあり, つぎ足歩行は不可能であった. 入院当日の頭部MRI水平断 (DWIを含む) では, 明らかな虚血病変は認めなかった. 脳幹梗塞を疑い第4病日に頭部MRIを前額断にて再検査したところ, 右中脳水道背側に小梗塞を認め中脳梗塞と診断した. 第7病日には左眼の外転時単眼性眼振は消失し, 歩行障害も軽減し第13病日退院した. MLF症候群と運動失調のみで発症する中脳の小梗塞はまれであり, 病巣診断には前額断を含むMR検査が重要であると考えられた.