2011 年 33 巻 1 号 p. 114-118
症例は47歳女性.後頭部痛とめまいを主訴に来院した.頭部CTでは異常所見を認めず,点滴と安静により症状が軽減したため帰宅された.翌日構音障害,嚥下障害,左顔面麻痺,左片麻痺,左感覚異常などが出現し,当科受診となった.MRI拡散強調画像で,脳幹と小脳に多発性梗塞を認め,MRAでは両側椎骨動脈遠位部と脳底動脈先端部で描出が不良であった.同部位は3D-CT angiographyでも局所的な途絶像を呈したが,MRIのbasi-parallel anatomical scanning (BPAS)画像では血管の外径が拡張していた.以上の所見より,椎骨脳底動脈解離による多発性脳梗塞と診断した.椎骨動脈解離は若年発症の脳梗塞では重要な原因の一つであるが,めまいや頭痛のみで発症することも少なくない.3D-CT angiographyやMRIで比較的容易に診断できるため,見落とさないための指針が必要と思われた.