紙パ技協誌
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技術報文
繊維配向自動制御システムの開発とPPC用紙のカール品質の向上
山本 准司轟 英伸小野 克正越智隆 越智隆佐々木 尚史佐野 博文
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2009 年 63 巻 2 号 p. 179-188

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抄録

抄紙機で製造された用紙は,繊維が偏って配列するため,その並び方である繊維配向に異方性が現れる。これまでのPPC用紙のカールや,新聞用紙のタワー型オフセット輪転機の色ずれ,ノンインパクトプリンター用紙の斜傾等のカールや用紙の走行安定性に関する研究により,これらは繊維配向と密接な関係にあることが分かっている。従って,繊維配向の制御技術は,これらの改善に必要不可欠な要素技術といえる。特にPPC用紙のカールは,繊維配向の表裏差が発生の主要因であり,カールの大きさやカール面の形成には配向強度の表裏差が,カール軸が抄紙方向からずれた形状のカールは配向角の表裏差により発生する。
我々は1994年に抄紙機上で走行する用紙の表裏の繊維配向を測定するオンライン繊維配向計の開発を行い,10年以上にわたってカール品質のコントロール等に役立ててきた。しかし,これまではオペレータが手動でマシン条件を調節し配向をコントロールしており,抄き出し,銘柄の変更時の調節に労力が掛かる等の問題点があった。
今回,手動での調整の問題点を解決するために新しい繊維配向の自動制御システムを開発した。このシステムは,ヘッドボックスのスライス開度とエッジフロー流量を自動で制御することにより,オンライン繊維配向計で連続的に測定したF面とW面の配向角の差を極小化することができる。この自動制御システムを実機に搭載し使用した結果,PPC用紙のねじれカールの大きさが,手動による制御時と比べて半分以下になった。そして,この自動制御システムを連続的に使用することで,ねじれカールの小さいPPC用紙を安定的に生産することが可能となった。繊維配向の連続自動制御は,2007年の初頭より行われ,現在も実施中である。

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© 2009 紙パルプ技術協会
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