自己免疫性肝炎(AIH)は中年女性に多く,潜在性,慢性に進行することが多い.一般的に,組織ではinterface hepatitisや炎症細胞浸潤,ロゼット形成などが特徴的である.今回,我々は,若年男性で急性発症し,経時的に腹腔鏡観察した自己免疫性肝炎の1例を経験した.初回の腹腔鏡観察では,AIHに特徴的な所見は認めず,2回目の観察では肝臓全体が萎縮し,赤色紋理を認めた.3回目は,肝のさざなみ状変化や赤色紋理が目立ち,斑紋形成を認めた.3回とも自己免疫性肝炎のスコアリングシステム上は疑診に留まっていた.病理組織像は中心静脈周囲の傷害が著しく,AIHとしては非典型的であった.プレドニゾロン40 mgを開始したところ,肝機能は改善し,IgG値,抗核抗体の抗体価は速やかに低下した.現在,プレドニゾロン5 mgで維持しているが,再燃傾向はない.原因不明の肝障害では,臨床像,組織像とも,非典型的であっても,自己免疫性肝炎の可能性を念頭に入れる必要がある.