RADIOISOTOPES
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原著
β-α相関事象測定を用いた大気塵埃の自然放射性核種の連続観測
—核燃料取り扱い施設などからの人工放射性核種のオンライン検知に向けて—
橋本 哲夫石山 央存伊藤 成樹
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2008 年 57 巻 11 号 p. 679-694

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抄録

放射線検出にフォスフィッチ型のα-β線弁別測定器を用い,α線とβ線由来のパルスを1μsの時間分解能を有する迅速パルス時間間隔解析システムに導入し,パルス発生時間を多重時間間隔解析(MTA)法で処理した。この解析システムではPC画面上でα線やβ線の計数率変化とともにβ-α連続壊変相関事象をパルス時間間隔分布(TIA)スペクトルとしてオンラインで観測が可能となった。ウラン析出薄膜,ウラン鉱物粉末,α線をカットした226Raからなる3線源の測定からは,α線とβ線の計数率とも常に一定値を示すトレンドグラフが得られた。大気塵埃を捕集しつつ本迅速パルス時間間隔解析法を適用したところ,塵埃に付着した222Rnの子孫核種由来のα線とβ線の計数率は明らかな捕集時間依存性を有するトレンドグラフを示しており,TIAスペクトルからは214Bi(β)→214Po(α)→連続壊変に由来するβ-α相関事象を164μsのα壊変の半減期により確認できた。
塵埃捕集装置とα/β弁別放射線検出器と組み合わせた本迅速パルス解析システムからのオンライン情報として,相関事象率(nαβ),α線計数率(nα)とβ計数率(nβ)がリアルタイムで得られる。これらの情報に基づき,核種混入検知パラメータRα又はRβ[=(nα or nβ)*(nα+nβ)/nαβ]を得た。塵埃を捕集しつつウランや226Ra線源を挿入し,これらのパラメータの変動を調査した。その結果,自然放射性核種に起因するバックグラウンドの影響下でも,極微量な人工α放射性核種の混入(数%程度以下)を迅速に検知できることがわかった。本システム構成を核燃料再処理施設や原子力関連施設の排気箇所でのオンラインRI(特にα放射性核種)混入(漏洩)の高感度自動検知のシステムとしての利用を提案する。

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