理学療法科学
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Print ISSN : 1341-1667
症例研究
外反母趾による歩行時下肢関節への影響
小松 宏慈中尾 成孝増田 有紀岡久 哲也近藤 心西川 幸治大澤 俊文高田 信二郎安井 夏生
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2011 年 26 巻 5 号 p. 717-722

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抄録

〔目的〕外反母趾症例の変形矯正術前後で下肢関節に与える影響を解析する.〔対象〕関節リウマチ,外反母趾と診断された69歳女性とした.主訴は右母趾外側の歩行時疼痛だった.〔方法〕3次元座標計測機器VICON-MX systemsを使用し,術前と術後6ヶ月での歩行解析を行った.〔結果〕術後の他下肢関節への影響は,非術側(左)膝関節内反モーメントが術側(右)より高く,術後,術側(右)足関節外反モーメントの増大がみられた.〔結語〕本症例は外反母趾変形矯正術により,右母趾の歩行時疼痛は消失し,外反母趾変形の矯正により母趾可動範囲が拡大し,歩容の改善がみられた.術前の異常歩行(術側(右)への重心偏位)は残存しており,非術側(左)の膝関節に約4倍の膝関節内反負荷がかかっており,内反膝関節症発症の可能性があることが考えられた.また,術側(右)足関節では,約7倍の足外反負荷の増大がみられ,外反母趾再発の可能性を考慮したリハビリテーションが必要だと考えられた.本研究結果は,外反母趾矯正術後に起こる下肢他関節への影響を示す一症例としてリハビリテーションの有用な指標になると考えられる.

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© 2011 by the Society of Physical Therapy Science
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