産業衛生学雑誌
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原著
港湾におけるフォークリフト運転手の全身振動曝露
―日本の曝露実態とEN 13059を用いた評価―
辻村 裕次垰田 和史西山 勝夫
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2006 年 48 巻 5 号 p. 157-168

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抄録

港湾におけるフォークリフト運転手の全身振動曝露―日本の曝露実態とEN 13059を用いた評価―:辻村裕次ほか.滋賀医科大学社会医学講座予防医学部門―フォークリフト運転手の健康問題に関して,腰痛リスクが多くの文献で指摘されてきた.その重要な要因として,全身振動曝露が挙げられている.欧州において,産業車両の全身振動評価のための試験方法が開発され,それを規定した欧州標準化規格が発行された.我々はその試験を応用した方法(CEN試験)により,阪神地区の港湾フォークリフトの全身振動を測定し,評価結果を報告した.同地区でのフォークリフト作業時の曝露全身振動値がCEN試験時より低値あるいは同程度であるならば,CEN試験は阪神地区港湾でのフォークリフト運転手の全身振動曝露に関するリスク評価として有用である.本研究は,CEN試験調査の曝露全身振動値評価への適用性検証を目的として,すでにCEN試験を実施したフォークリフト4台について延べ19日間の実作業中の全身振動測定調査を行った.振動と共に,車両速度,着座状態,前後進ギヤレバー位置,ビデオ映像などの情報を同時に測定・収集した.結果については,鉛直方向全身振動値は4台ともCEN試験値を下回った.すべての測定日で優越な振動方向はなかった.Health値(直交3方向合成振動値)は1台で同等と判定され,他の3台ではCEN試験値を下回った.3台を作業状態別に解析した.荷物積載状態での前進移動時では,3台とも鉛直方向全身振動値とHealth値がCEN試験値を下回った.フォークリフトを使った積み降ろし作業では,前後が最も人体影響の大きい振動方向であった.阪神地区の港湾フォークリフト作業において,CEN試験は曝露全身振動値評価に対して適用できることが示唆された.しかし,CEN試験が走行時の全身振動曝露を基としているのに対し,実作業では,積み降ろし作業が要因として考えられる,考慮すべき前後方向全身振動が観察された.詳細な作業状況記録を含めた,さらなる実作業中全身振動測定が必要であると考えられる.
(産衛誌2006; 48: 157-168)

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