色材協会誌
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研究論文
強制薄膜式リアクターによる銅フタロシアニンナノ粒子の表面処理とその分散性
本田 大介小林 加永子数本 優前川 昌輝張 暁峰緒方 嘉貴榎村 眞一野島 雅酒井 秀樹阿部 正彦
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2009 年 82 巻 9 号 p. 381-386

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抄録

強制薄膜式リアクター(FTFR)を用いて,数~10 nmの銅フタロシアニン(Cu-Pc)ナノ粒子を作製するとともに粒子の表面処理を行った。手法には発煙硫酸に溶解させたCu-Pcを水に希釈することでCu-Pc粒子を析出させる方法を用いた。得られたCu-Pcナノ粒子の表面状態を,IRおよびXPSを用いて検討したところ,スルホ基の存在を確認した。さらにTOF-SIMSを用いてより詳細に検討したところ,Cu-Pcナノ粒子の表面にはスルホン化物が存在することを見いだした。さらに,表面にスルホ基が導入されたCu-Pcナノ粒子は有機溶媒中での分散性に優れていることを見いだした。これらの結果から,FTFRを用いるとCu-Pcナノ粒子の表面処理を均一に行えることがわかった。また,Cu-Pcナノ粒子を親水化処理するために発煙硫酸を濃硫酸に代えて表面処理を行った。得られた水溶液のpHをアルカリ性に調整したところ,Cu-Pcナノ粒子の表面には水酸基が存在することがXPSによって示唆され,水溶液中での分散性に優れていることを見いだした。これらの結果から,処理溶液の種類を変えたCu-Pcナノ粒子をFTFR処理すると,有機溶媒のみならず水溶液にも分散させることを可能にできることがわかった。

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© 2009 一般社団法人 色材協会
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