応用生態工学
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生物多様性保全のための河川における侵略的外来植物の管理
宮脇 成生鷲谷 いづみ
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2004 年 6 巻 2 号 p. 195-209

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抄録

日本の河川において外来植物の侵入が進行している.国が管理する河川において,外来植物群落の占める面積の割合はすでに約15%に及び,その大部分はわずか数種類の"侵略的外来植物"の群落によって占められている。
このような外来植物の侵入は,生物多様性に対する大きな脅威であるだけでなく,生態系を全く異質なものに変えてしまう可能性を持っている.そして,外来植物侵入によって生物多様性や生態系へもたらされる変化は,不可逆的なものである可能性がある.したがって,生物多様性および健全な生態系を保全するためには,早急に外来植物対策を進める必要がある.
一方で,外来植物対策を成功させるためには,自然再生事業などといった生態系管理の一環として対策を位置づけることが重要である.また,1)可能な限り外来種侵入後の早い段階で対策を開始し,2)根絶のために十分な労力を集中させ,3)対策自体がその他の生物や生態系に与える影響を極力小さくし,4)生態的な復元と併せて実施し,5)広域・長期的視点に立ち,順応的管理手法に基づいて実施することが必要である.
そのためには,外来植物の土壌シードバンク特性をはじめとする生活史および個体群動態などといった生態学的特性,侵入・分布拡大を助長する要因を明らかにする必要がある.さらに,駆除方法の設定においても,管理の戦略にもとづき環境負荷の小さい方法を選ぶだけでなく,より効果が得られるような実施タイミングを選ぶようにしなければならない.このとき,外来種の生態学的知見だけでなく,周辺に生育・生息する生物,河川工学などさまざまな専門分野の知見を統合する試みが必要である.
さらに,広域・長期的な戦略に基づく外来植物管理のためには,それぞれの地域の市民・NPOなどが個別に対策を実施するのではなく,流域内の他地域の主体との連携のもとに対策を進めることが不可欠である.

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