日本薬理学雑誌
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門脈下大静脈端側吻合犬の血中アンモニア濃度に及ぼすLactuloseの影響
松岡 隆宇留野 強山田 誠水上 晶子金武 有里砂金 信義久保田 和彦
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1990 年 96 巻 3 号 p. 97-101

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抄録

高アンモニア血症のモデル動物として門脈下大静脈端側吻合術(Eck氏痕術)を施したビーグル犬を用い,血中アンモニア濃度及び糞便pHに及ぼすlactuloseの影響を検討した.術前及び術後2週間目のEck氏痩犬の血中アンモニア濃度は,それぞれ4.65±0.34μg/ml(N=12),8.66±0.60ug/ml(N=6)であった(P<0.01).一方,術前及び術後2週間目のビーグル犬糞便pH値の間には有意な差は認められなかった.肉投与後の血中アンモニア濃度は,対照群では12.65±1.64pug/ml(N=8),1actulose投与群(2.1g/kg,p.o.)では8.48±0.90μg/ml(N=8)で両者の間Y'有意差が認められた(P<0.05).lactulose投与群(2.1g/kg,p.o.)の糞便pHは5.58±0.08(N=8)で,対照群の6.24±0.09(N=8)に比べ有意に低かった(P<0.01).2.1g/kg以下のlactuloseの経口投与では水様便を発生しなかったので,lactuloseの血中アンモニア低下作用にlactuloseの瀉下作用の関与は少ないものと考えられる。lactuloseの血中アンモニア低下作用は,腸内容物のpH低下によるアンモニアの吸収阻害,腸内細菌叢の変化によるアンモニアなどの有害窒素化合物産生減少,などにより発現されるものと思われる.

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