1995 年 32 巻 7 号 p. 471-477
近年, 百寿者の数の増加は著しく, 貧血を診断するために, 健康百寿者の赤血球パラメーターの標準値の確立が望まれている.
対象は, 百歳に達した男性27名 (健常群17名, ADL低下群10名), 女性102名 (健常群33名, ADL低下群69名) の計129名の百寿者で, 末梢血の結果に影響を与える疾患を持つ百寿者は対象から除外した. 統計処理にはt検定を用いた.
男性健常百寿者の赤血球数は, 403±54.7万/μl, ヘモグロビン値は12.4±1.3g/dl, ヘマトクリット値は38.2±3.9%, MCVは95.3±5.3fl, MCHは31.4±2.2pg, MCHCは32.6±1.1%であった. 女性健常百寿者の結果はそれぞれ次の通りであった: 375±43.9万/μl, 11.6±1.2g/dl, 36.3±3.6%, 97.1±5.3fl, 31.0±2.3pg, 32.0±1.3%. 健常百寿者の男女間の比較では, ヘモグロビン値は, 女性が男性より有意に低下していた.
男性において健常群とADL低下群との比較では, ADL低下群は健常群に比べて, 赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値が有意に低下し, 逆にMCVは有意に増加していた. 女性において, 在宅の百寿者と老人ホームの百寿者との比較では, 全ての赤血球パラメーターにおいて有意差は認められなかった.
今回の検討で, 健常百寿者における赤血球パラメーターの標準値が明らかになり, また男性のADL低下百寿者では赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値が低下していることが判明した.