1996 年 33 巻 3 号 p. 180-185
長寿の遺伝的要因の一つを調べるため, 家族歴としての両親の死亡年齢と, 百寿者のヒト白血球抗原 (HLA-DR) 型の関連性に関する検討を行った. 家族歴では, 父親と母親の平均死亡年齢は対照群で母親が有意に高く, 両群とも全体的に母親の方が父親より長命の傾向を示した. HLA-DR型の出現頻度ではDR1が百寿群に有意に高かったが, DRw9は有意にはならなかった. しかし, 百寿群と対照群別にみた両親の死亡年齢とHLA出現頻度の関係においては, 対照群で群全体の平均死亡年齢に比べ, DRw9は有意に低かった. この傾向はまた, 両親の死亡年齢の推移にしたがったDR型の出現頻度の比率分布においても認められた. 本研究で家族歴とHLAが同一の対象で調べられたことにより, 長寿に関する家族歴とHLA-DRのより積極的な関連性の存在と, さらにその他のDR型の一部にも有意差が認められたものも見出されたため, 単一の遺伝子座位によらぬ比較的広い関連性がある可能性も示唆された.