日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
沖縄長寿研究: 超高齢者のHLAに関する分子遺伝学的解析
秋坂 真史鈴木 信
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1998 年 35 巻 4 号 p. 294-298

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抄録

沖縄県人の長寿要因については, これまでも環境要因の上では比較的よく調査がなされてきた. しかしながら, 長寿に関する遺伝学的要因とくに分子遺伝学的因子に関しては, 沖縄県人のみならず本邦の高齢者についても未だほとんど調べられていない状況にある. そこで, 沖縄県人の長寿に関する遺伝要因の一つを調べるため, 疾病感受性という免疫遺伝学的観点から主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) の白血球抗原 (HLA) Class II領域におけるDNA多型について研究を行った.
対象は, 沖縄県在住の百歳以上長寿者120名および同地域在住の一般成人129名である. 方法は, 長寿者および対照者の血液から採取したゲノムDNAのMHC領域におけるHLA-DRB1, -DQB1, -DQA1の各部位をPCR法によって増幅し, 個々の部位でのアリル特異的酵素を用いて切断し電気泳動によるフラグメント・パターンを調べるRFLP法を用いた.
長寿群では一般成人群よりも, HLA-DQA1ではDQA1*0101 (04) およびDQA1*05で, またHLA-DQB1においてはDQB1*0503のみで有意に高かった. 一方でDQA1*0102, DQA1*0103およびDQB1*0604の頻度が低かった. さらにDRB1部位においては, DRB1*0101, DRB1*1201およびDRB1*1401の頻度が高く, 一方でDRB1*0403およびDRB1*1302の頻度が低かった. 以上の遺伝子のうち幾つかは, 検索抗原数で補正したpレベルでも, なお統計的有意を保ったものがみられ, HLA領域における幾つかの遺伝子の存在が長寿達成に好ましい影響を及ぼしている可能性が示唆された.

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