日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
生体防御機構としてのディフェンシン
富田 哲治長瀬 隆英
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2001 年 38 巻 4 号 p. 440-443

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抄録

哺乳類, 昆虫などにおいて感染防御を司る生体内の抗菌物質の存在については以前より知られている. ヒトにおける抗菌ペプチドはディフェンシンと総称され, 細菌, 真菌など広範囲にわたり抗菌活性をもち, このうち粘膜上皮の感染防御に関与しているのがβ-defensin である. 現在, 3種類のβ-defensin が単離・構造決定されているが, human β-defensin-2 (hBD-2) は, 1) 肺, 気管にて発現がみられる, 2) 細菌感染や炎症性サイトカイン刺激にて発現誘導される, という特徴をもっている. そのため, hBD-2は呼吸器感染症により密接な関係をもつことが示唆されている. その抗菌活性機序として従来より細菌細胞膜表面にディフェンシン重合体が孔 (pore) を形成し, 細胞膜透過性を亢進するためと考えられているが, hBD-2ではそれ以外に膜電位への静電気的な関与によるものと考えられている. また発現誘導されるhBD-2の転写活性としてはCD14と Toll like receptors (TLRs) を介してNF-κBを活性化すると報告されている. hBD-2は元来生体で産生されるものであり, 広範囲に抗菌活性を有することより, 今後の臨床的応用が期待される.

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