日本耳鼻咽喉科学会会報
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Acoustic Rhinometryによる鼻閉の評価
鼻腔モデルによる検討
大本 幹文佐多 由紀川野 和弘臼井 信郎
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キーワード: 鼻閉, 鼻腔開存性
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1998 年 101 巻 8 号 p. 1022-1028

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抄録

鼻閉の診断治療のなかで,鼻腔の通気性に対する客観的評価は重要である.鼻腔通気度計による鼻腔抵抗の測定法は鼻呼吸の観察法として極めて有用であると考えられるが,鼻腔抵抗が鼻閉感と必ずしも一致しないという報告も存在し,その評価法にいまだ問題点があるのも事実である.
一方,近年,客観的評価法の一つとして1989年Hilbergらは音パルス反射を利用したacoustic rhinometryによる鼻腔の開存性の評価法を報告し,鼻腔内の狭小部の部位診断が可能であるとした.その後,国内外で本法の有用性が検討されているが,acoustic rhinometryはあくまでも鼻腔の開存性を音パルス反射によって測定するため,実際の呼吸動態から評価する鼻腔抵抗とは異なった意味付けがある.そこで今回は,実際の臨床に準じた形の鼻腔モデルを作製し,そのモデルにおけるacoustic rhinometryの測定から,鼻粘膜の変化の評価の可能性を検討することとした.
モデルとして用いたのはシリコン製鼻腔モデルLM005(高研製)である.エポキシ樹脂製接着パテにより下鼻甲介,中鼻甲介を被い,まず下鼻甲介の前方より後方へ,パテを削ることによりacoustic rhinometer RHIN2100(SRE社製,デンマーク)を用い,鼻腔開存性の解析を行った.反対に,鼻粘膜の腫脹を評価する目的で鼻腔モデルにさらにパテを下鼻甲介前端,中鼻甲介下端,下鼻甲介後方に追加し,測定曲線の変化を観察した.
その結果,パテを切除しても追加しても鼻腔後方の変化を測定曲線はとらえられなかった.また鼻粘膜の収縮,腫脹は,前鼻孔よりLendersのいうG-Notchの動きで評価できる可能性が示唆された.acoustic rhinometryはその特性を十分生かすことで鼻閉の診断に有用であり,さらに臨床的な検討が求められる.

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