日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
血中ラミニンγ2鎖濃度測定による頭頸部癌診断に関する検討
倉富 勇一郎片山 政彦木寺 一希林田 精一郎佐藤 慎太郎門司 幹男島津 倫太郎綾田 寅之進藤 賢史井之口 昭
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 109 巻 6 号 p. 517-523

詳細
抄録

癌細胞に発現したラミニンγ2鎖は癌の浸潤•転移などの悪性度に関与することや,切断され血中に遊離することが分かっている.我々はラミニンγ2鎖発現の検討を腫瘍マーカーのような簡便な臨床検査へと展開させることを目的として,頭頸部癌患者末梢血中のラミニンγ2鎖濃度をヒトラミニンγ2鎖に対するモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法により測定し,臨床因子と比較検討した.その結果,1)末梢血中ラミニンγ2鎖濃度の正常上限は50ng/ml程度と推測された.2)治療前の血中ラミニンγ2鎖濃度は60例のうち40例(67%)で50ng/ml未満であり,20例(33%)で50ng/ml以上に上昇していた.3)血中濃度上昇例の比率と原発部位,経過,T,N,M各因子との関連はみられなかったが,stage進行例で濃度上昇例が多い傾向がみられた.4)治療前後で濃度測定を行った34例のうち,治療前値が50ng/ml未満の24例では治療による濃度変化はほとんどみられなかった.5)5例において50ng/ml以上の治療前値が治療により50ng/ml未満に低下した.6)4例では治療後も50ng/ml以上の高値を示して原病死し,そのうち3例は多発性の遠隔転移を伴い100ng/ml以上の著明な高値を示した.末梢血中ラミニンγ2鎖濃度はラミニンγ2鎖を発現する高悪性度の癌細胞の個体内における総量を反映することが示唆され,頭頸部癌の浸潤•転移能という悪性度や治療の奏効性を判定する新たな腫瘍マーカーとして期待できる.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
次の記事
feedback
Top