2005 年 38 巻 9 号 p. 1414-1419
目的: 術後癒着性イレウスを対象としてイレウス管の管理と手術のタイミングについて検討した. 方法: 入院2日以内の軽快例または緊急手術例を除き, 入院3日目以降に保存的治療のみで改善した23症例と手術を行った56症例 (79症例すべて入院より24時間以内にイレウス管留置) について, イレウス発症からイレウス管挿入までの時間, イレウス管の造影所見, 進行状況, 排液量に着目して比較検討した. また, 両群の予後についても検討した. 結果: 入院3日目以降までイレウス管留置を必要とした症例において, 保存的治療有効群では発症からイレウス管挿入までの時間が平均35時間で手術群の44時間に比べて有意に短かった. イレウス管造影所見では小腸閉塞, 停滞型は手術へ移行する傾向が高く, またイレウス管先端部の進行状況が良好な症例は有意に保存的改善となった. 排液量の検討では3日目の排液量500ml以上の症例は有意に手術へ移行していた. また, 3日目以降に保存的に改善した23症例は3年以内70%が再発し, その半数が手術を施行されていた. 考察: 術後癒着性イレウスの保存的治療においてはイレウス管の迅速な挿入を考慮し, 挿入後は排液量推移の観察が重要である. 3日目以降にイレウスが改善せず, 3日目の排液量が500ml 以上の症例では手術を考慮すべきである.