症例は38歳の肝硬変の男性で, 腸閉塞症状を主訴に来院. 腹部CTで著明な腹水貯留, 一塊となった腸管を認め, 小腸軸捻転と判断し開腹した. 腹腔内は白色の硬く厚い被膜に覆われ腸管を識別できず, 萎縮した肝臓表面も同様の被膜に覆われていた. 手術所見より硬化性被.性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis; 以下, SEPと略記) と診断した. 術後のステロイド療法により症状改善し, いったん退院したが, 激しい腹痛で再入院. 十二指腸球部の穿孔の診断で再開腹, 穿孔部閉鎖術を施したが, 縫合不全を起こし, 徐々に肝不全が進行し死亡した.SEPは肉眼的に “Cocoon-like appearance” を特徴とするまれな疾患で, 肝硬変に合併したSEPの報告例は極めて少ない. 特に, 本症例は肝硬変から特発性細菌性腹膜炎の状態にあったと考えられ, 腹腔内の慢性反復感染とSEP発症との関連性が示唆される点で重要と考えられた.