1990 年 81 巻 1 号 p. 122-129
過去約5年間に出生前超音波検査により発見された腎尿路奇形35例に臨床的検討を加えた.
1) 出生前の超音波所見: 胎児の尿路異常が発見された時期は妊娠20週が最も早く, 30週以前に発見されたのが30%であった. 羊水過少を呈したのは5例であった. 出生前と出生後の診断が一致していたのは約60%であった.
2) 新生児期の処置: 12例では新生児期に何らかの泌尿器科的処置が加えられた. これらは尿通過障害に対する尿ドレナージと腫大した嚢胞性腎疾患に対する摘除術が主たるものであった. 2例に対しては内視鏡的手術が加えられた.
3) 治療法と予後: 死亡は5例 (嚢胞腎2例, 両側多嚢腎1例, 後部尿道弁1例, 巨大尿管1例) であった. 追跡可能であった26例中, 15例では手術が施行され, 他の11例では保存的に経過が観察されている. この内, 腎盂尿管移行部狭窄では3/12例が腎盂形成術の適応となり, 他の症例は自然改善の傾向を示している. 多嚢腎では経過中に嚢胞の増大が観察された2例で腎摘除が加えられ, 他の症例では相対的な腎の縮小が認められている.
従来は尿路感染や腎機能障害の症状を呈して初めて発見されていた症例が, 出生前診断により症状が出現する以前に処置可能となったのは, 先天性尿路奇形の治療の上で大きな進歩である.