日本泌尿器科学会雑誌
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腎細胞癌における手術療法の検討
第2報 腫瘍血栓除去術について
小林 幹男黒川 公平戸塚 芳宏岡村 桂吾松本 和久今井 強一山中 英寿
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1991 年 82 巻 1 号 p. 130-138

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抄録

1961年から1989年までに群馬大学泌尿器科で入院治療を行った下大静脈腫瘍血栓 (14例) 及び腎静脈腫瘍血栓 (14例) について臨床的検討を行った. 性別は男性19例, 女性9例と男性に多く, 平均年齢は男性62.1歳, 女性54.4歳であった. 患側は右側16例, 左側12例で右側に多かったが, 腫瘍の局在は上下及び全体に分けて検討したところ左右とも発生部位に偏位を認めなかった. 主訴は尿路症状が最も多かった反面, 下大静脈または腎静脈閉塞に起因した随伴症状は蛋白尿 (56%) 以外は腹壁静脈怒張と下肢浮腫の3例と精索静脈瘤の1例だけであった. 画像診断では下大静脈腫瘍血栓の全例が下大静脈造影で診断され, またCTスキャンによる診断も下大静脈腫瘍血栓で100%, 腎静脈腫瘍血栓で83%の正診率であった. 腫瘍血栓の進展は stage に関係なく進展するが, 腫瘍血栓の進展度と予後との関係では, Stage IIIc以上の症例で腫瘍血栓の進展度にかかわらず予後は不良であり, また手術の有無にかかわらず長期生存は不可能であった. 現在のところ24ヵ月以上の生存を認めていない. Stage IIIAでは再発は認めるものの10ヵ月から98ヵ月間の生存期間を認め, 腫瘍血栓の進展度に関係なく予後は良好であった. 手術術式に関しては術前の画像診断により腫瘍血栓の進展度および範囲を的確に把握した上で手術術式を選択すべきであると考えた.

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