日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
表在性膀胱腫瘍に対するBCG膀胱内注入の効果とBCG維持注入の必要性に関する検討
薮崎 昇小松 秀樹多胡 紀一郎山田 豊上野 精
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 82 巻 2 号 p. 290-296

詳細
抄録

1985年6月から1988年10月の間42例の初発表在性膀胱腫瘍 (pTa, pT1) 患者に再発予防目的にBCG膀胱内注入を行い prospective randomized trial によってBCG維持注入の有用性を検討した. BCGの注入はTUR-BT後5日間連日 mitomycin C 20mg 膀胱内注入に引き続き, Tokyo strain 80mg を週1回計6回, 維持注入はその後3ヵ月ごと4回行った. 42例は randomization で非維持群22例, 維持群20例と分けられたが, 副作用のため非維持群の2例, 維持群の1例で6回のBCG注入が施行できなかった. また, 経過観察が1年以下で途切れた症例が非維持群1例に対し維持群で5例と多く, 維持群の除外症例が多くなった. 以上BCGを6回以上注入し, 1年以上経過観察ができたのは33例であった. これら33例について平均28ヵ月の観察の結果, 再発は6例, 3年累積非再発率は82%と良好であった. BCG採用以前に当院でTURと mitomycin C のみで治療した症例の3年累積非再発率は58%であり, BCGの再発予防効果が高いと考えられた. 再発した6例の初発時腫瘍の深達度はすべてpT1bで, pTa+pT1a群に比べてpT1b腫瘍の非再発率は有意に低かった. 次に, 6回のBCG注入後初回の膀胱鏡検査で非維持群, 維持群それぞれ1例に再発があったため, これら2例を除外した非維持群18例, 維持群13例の比較をした. 3年非再発率は各83%, 94%で, 両群の非再発率に有意差はなく, 維持注入療法の有用性はほとんどないと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top