日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
周産期に発見される多嚢腎の治療方針
東田 章細川 尚三島田 憲次
著者情報
キーワード: 多嚢腎, 自然経過, 治療方針
ジャーナル フリー

1992 年 83 巻 10 号 p. 1628-1632

詳細
抄録

当センターにおいて経験した片側の多嚢腎17例につき, 臨床経過の検討を行い, 治療法の考察を行った. 2例は経過観察期間が短く, 1例は多嚢腎による圧迫のため生後すぐ腎摘除術を行った. 残り14例中5例 (36%) は多嚢腎の大きさは不変で, 7例 (50%) は縮小した. しかし, 2例は, 経過観察中増大したため, 腎摘除術を行った. 高血圧, 悪性腫瘍の発生は認めなかった.
対側の腎, 尿路に対し検索を行ったのは15例で, うち5例 (33%) に異常を認めた. その内訳は, VUR 2例, 腎盂尿管移行部狭窄1例, 中部尿管狭窄1例, 異所性尿管瘤1例であった.
多嚢腎の治療方針は, 原則として経過観察でよいと考えられるが, 周囲臓器への圧迫症状を呈する場合や, 2歳をすぎてもなお増大傾向の見られる場合には, 腎摘除術の適応となると考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top