日本泌尿器科学会雑誌
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日米前立腺腺癌の病理組織学的比較
原田 昌興根本 良介内田 克紀赤座 英之小磯 謙吉F. K. Mostofi
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1993 年 84 巻 6 号 p. 1110-1118

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抄録

日米の前立腺癌症例1,037例および987例に, 本邦の前立腺癌取扱い規約に準拠した分化度分類, WHOの核異型度分類および Gleason 分類を適用して一人の病理医 (M. H.) が全例を検索し, 予後との関連を含め臨床病理学的比較検討を試みた. 症例の集積年代の相違を考慮しても, 本邦例には診断時 stage D症例の多い傾向がみられた. 全例の分化度分類による比率には差が見られなかったが, 各 stage 群における分化度分布には有意差が見られ, 米国例ではC, Dの進行癌でも高分化腺癌が本邦例の約2倍を占め, 本邦例では中分化腺癌の比率が高い傾向を認めた. 核異型度分類でも本邦例には高異型度症例が多く, Gleason 分類では grade 5, score 9~10の頻度が高率であった. 癌死例の生存率, 生存期間の分析では分化度, 核異型度の予後因子として有意性が日米両群において示されたが, 本邦の低分化腺癌あるいは核異型高度の症例は, 同等の異型度を示す米国例に比して予後不良との結果であった. Grade stage category による癌死亡率では, 本邦の category 7~10の症例は米国例に比し高値を示したが, 両群の死亡率曲線は相似し category 分類の予後因子としての有意性が確認された. 以上の結果から本邦例には米国に比し診断時点で既に高度に進行した, 組織学的に高異型度の予後不良例が多い傾向が窺われ, 発見の遅れと共に自然史を含めた臨床癌の性格に差のあることも示唆された.

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