日本泌尿器科学会雑誌
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自己血輸血法におけるエリスロポエチン (rH-EPO) の用法・用量の検討
経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) 患者を対象として
稲土 博右
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1995 年 86 巻 12 号 p. 1720-1727

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抄録

(背景と目的) 手術時出血に対する対応として, 同種血輸血 (他家血輸血) が主に行われているが, 輸血後合併症や腫瘍免疫の立場から考えると, それを回避することが望ましい. 我々はすでに遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン (rH-EPO) を術前自己血貯血の際に用いた良好な結果をえた.
(対象と方法) rH-EPOの至適投与量・投与法の決定を目的に泌尿器科入院患者の内, 経尿道的前立腺切除術予定の86名に対し6通りのrH-EPO静脈内投与量・法と6通りのrH-EPO皮下投与量・法を行い各群間で比較検討を行った.
(結果) 9,000IUのrH-EPOを連日静脈内投与, または10,500IUのrH-EPOを3日毎に皮下投与を行えば5日に一度の割合で循環血液量の10% (約400ml) の自己血を合併症や副作用を伴わずに貯血できることが判明した.
(結論) この方法を用いれば, 自己血保存期間の3週間で約1,200mlの術前自己血貯血が行え, 大半の手術時の他家血輸血が回避でき, またこれ以上の出血が予想される手術の場合でも他家血輸血量を減少させることができる. 将来的には, 術前貯血法に加えて術直前採血・希釈法や術中出血回収法の併用を行えば, 外傷などを含む緊急手術以外の予定手術に対し他家血輸血が回避できるようになり, 輸血後合併症の発生を防止できる.

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