2004 年 95 巻 3 号 p. 626-629
20歳男性. 左陰嚢の腫脹を主訴に近医を受診. 陰嚢水腫として穿刺・吸引が行われたが, 再貯留, 水腫壁の肥厚があり当科を受診した. CTでは陰嚢内の液体貯留と石灰化を認め, 水腫壁切除を施行した. 術中の所見では精巣鞘膜には腫瘤を認めないものの, 鞘膜全体の不整な肥厚を認めた. 病理組織検査では, CA125免疫組織染色で陽性に染色され, 精巣鞘膜に発生した漿液性乳頭状腺癌と診断した. 全身検索では他に原発巣を示唆する所見はなく, 精巣鞘膜原発と診断し, 根治的に左陰嚢内容全摘除, 陰嚢皮膚部分切除, および左浅部および深部鼠径リンパ節郭清を施行した. リンパ節に転移は認めず, 術後38ヵ月を経過しているが再発転移は認めていない. 漿液性乳頭状腺癌は卵巣腫瘍でしばしば見られるが, 精巣鞘膜に発生する事は極めて稀で, 文献的には自験例を含めわずか3例である.