日本泌尿器科学会雑誌
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簡便な唾液テストステロン酵素免疫測定
三田 耕司松原 昭郎碓井 亞
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2005 年 96 巻 6 号 p. 610-616

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抄録

(緒言) 近年, 血清フリーテストステロン (Serum Free Testosterone: Se free T) の変動による情緒や行動の変化が注目されている. 一方, 唾液中テストステロン (Salivary Testosterone: Sa-T) は, ほとんどが遊離した状態で存在することより Se free Tとの関連が示唆される. そこで今回, 我々はSa-Tを簡便な酵素免疫測定キットで測定し, その有用性を検討した.
(対象および方法) 対象は2004年1月から6月までに当科で加療中の患者でボランティアを募り, 午前6時から午前11時までの間に血清と唾液の採取を同時に行った76例で男性74例, 女性2例, 年令は28才から90才 (平均67.2才±12.7才) (以下, 平均値±標準偏差) で中央値は70才であった. 基礎疾患は良性疾患28例と経過観察を含む悪性疾患48例で, このうち16例は前立腺癌に対しLH-RHアナログによるホルモン療法が施行されていた. Sa-T, Se free Tおよび唾液サンプル中の血液混入についての測定は, Salivary testosterone enzyme immunoassay kit (測定可能範囲: 1.5~360pg/ml), Coat-A-Count free testosterone (測定可能範囲: 0.15~50.0pg/ml), Blood contamination enzyme immunoassay kit (測定可能範囲: 0.2~10.0mg/dl) を用い, これらの測定値は二回測定値の平均値とした. 血清 Bioavailable testosterone (BT) は Liqiud Chromatography-Mass spectrometry/Mass spectrometry 法 (測定可能範囲: 20.0pg/dl以上) による実測値の測定を行った. これらの測定系の平均 Coefficient of variation は15%以下であった.
(結果) 76例のSe free Tは0.15から21pg/ml, (6.6±4.2pg/ml) で, その中央値は7.0pg/mlであり, 76例中10例をランダムに抽出してBTとの相関を検討したが, Se free TとBTには高い相関関係 (r=0.964, P<0.01) を認めた. 唾液76検体のうち血液の混入, 測定限界値外であった11検体 (14.5%) を除いた65検体のSa-Tは32から360pg/ml (176.8±96.6pg/ml) であり, その中央値は168.0pg/mlであった.
Se free TとSa-Tの65例の関連については有意な正の相関 (r=0.592, P<0.01) がみられ, 唾液テストステロン測定値による血清フリーテストステロン値の予測が可能であった.
(結論) 簡便な酵素免疫測定キットによるSa-Tの測定が可能であり, その値は Se free Tと相関しSa-Tが生体内活性型テストステロンの簡易的な指標となり得ることが示された.

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