日本泌尿器科学会雑誌
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頚髄損傷患者の排尿管理経尿道的括約筋切開術の長期成績
高橋 良輔木元 康介
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2008 年 99 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

(目的) 当院では頚髄損傷四肢麻痺患者に対して, 良好な失禁性排尿を獲得・維持する目的にて経尿道的括約筋切開術 (以下, 括約筋切開術) を積極的に施行してきた. 今回はその長期成績について検討した.
(対象と方法) 当院開設 (1979年6月) 以降, 受傷急性期より当院にて排尿管理を行い括約筋切開術を施行, 現在まで外来にて5年以上経過観察可能な39症例とした. 性別は全て男性. 平均年齢は36.2歳平均経過観察期間は13.1年 (5~27年) であった.
(結果) 39症例中30症例は失禁性排尿を維持していたが, 9症例では何らかの尿路管理の変更を要していた (膀胱瘻造設4例, 自己導尿可能2例, 介助者による導尿必要2例, その他1例). その主な原因は「尿排出不良に伴う自律神経過緊張症状の増悪」であり, その要因のひとつとして術後徐々に排尿筋反射が減弱することが考えられた. また上記原因にて尿路管理変更を要した群では, 術前の排尿筋反射時の最大膀胱内圧が有意に低値であった.
(結論) 括約筋切開術を含む失禁性排尿による排尿管理は長期成績も比較的良好であり, 今後も頚損患者の排尿管理において有用な一選択肢と考えられた. しかしながら排尿筋反射は術後徐々に減弱していく傾向にあり, 経過観察時にはこのことに留意しておくべきと考えられた.

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