日本臨床免疫学会会誌
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白血球減少をきたした「胸腺腫を伴う免疫不全症」の2例
宇野 由佳水口 隆中尾 克之小阪 昌明
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1992 年 15 巻 2 号 p. 177-183

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抄録

白血球減少をきたした胸腺腫を伴う免疫不全症の2例を経験した.患者は易感染性を主訴とした55歳男性(症例1)と62歳男性(症例2)で,いずれも低ガンマグロブリン(γ-gl)血症と胸腺腫があり,胸腺腫を伴う免疫不全症と診断した.症例1は顆粒球減少症,症例2はリンパ球減少症の合併を認めた.末梢血リンパ球表面マーカーでは,両例ともにCD 4+/CD 8+比の低下とB細胞の減少がみられ,特に症例2で著明であった.また症例1でCD 8+ CD 11 b- CD 57+ DR-細胞,患者2でCD 8+ CD 11 b+ CD 57+ DR+細胞の増加を認めた.患者骨髄単核球のCFUアッセイでは, T細胞除去により症例1ではCFU-G, CFU-GMの,症例2ではCFU-G, CFU-Eのコロニー形成の改善を認め,この2例ではT細胞系の異常により造血が抑制され,白血球減少の一因となっていることが示唆された.胸腺腫を伴う免疫不全症の一部の症例ではなんらかの原因でT細胞系に異常を生じ,そのために胸腺腫,低γ-gl血症,造血障害が発症するものと考えられる.

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