日本透析療法学会雑誌
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血液透析における低分子ヘパリン投与量のモニター法の比較検討
篠田 俊雄新倉 秀雄城田 俊英片倉 正文中川 成之輔
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1991 年 24 巻 8 号 p. 1130-1136

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抄録

血液透析における低分子ヘパリン (low molecular weight heparin: LMH) 投与量のモニターは, 従来の非分画ヘパリンの場合に用いられる凝固検査によっては行うことができない. これに対し, Thrombelastographyにおける反応時間r (TEG-r) と全血Xa凝固時間 (XaCT) の有用性が報告されている. 本研究の目的は測定値が残血状態を反映するかどうか, およびLMHの投与量を変化させたときの測定値の変化度の観点から検査法の鋭敏性を評価することである. TEG-r, XaCTとともに血漿ヘパリン濃度 (抗Xa活性), 活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) を7症例において同時測定し, その結果を比較検討した. 残血状態が全例において軽度であった測定値をその検査法のcut-off値としたとき, cut-off値以上あるいは未満の測定値において実際の残血状態と一致するか否かを検討すると, TEG-rにおいてのみ有意性を認めた. また, 測定値が残血状態を反映するかどうかのsensitivity, negative predictive valueはそれぞれTEG-rで69%, 67%, XaCTで46%, 53%, 血漿ヘパリン濃度で38%, 50%, APTTで23%, 44%であった. 投与量変更に対する測定値の変化度については, LMHの投与量を100単位/時変化させるとTEG-r, APTT, XaCTではそれぞれ測定最小単位の20倍以上の変化を示したのに対し, 血漿ヘパリン濃度では8倍の変化であった. 以上の結果より, LMH投与量のモニター法としてTEG-rが4者のなかでは最良と考えられるが, 検査の簡便性も考慮するとXaCTも有用な方法と思われる. 全血を用い, 凝固促進物質の添加なしに測定することがTEG-rにおける好成績に関与するものと考える.

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© 社団法人 日本透析医学会
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