日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
維持透析患者の心房性Na利尿ペプチドの臨床的意義
大橋 宏重小田 寛松野 由紀彦渡辺 佐知郎杉下 総吉琴尾 泰典上野 勝己杉山 明岡田 邦博松原 徹夫松尾 仁司荒井 正純
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 24 巻 1 号 p. 43-47

詳細
抄録

心房性Na利尿ペプチド (α-hANP) の慢性血液透析 (HD) 患者と持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患者の臨床的意義, とくにドライウエイトとの関係について検討した.
健常者10例 (男性5例, 女性5例, 平均年齢45.6歳), CAPD患者11例 (男性7例, 女性4例, 平均透析歴20.9か月), HD患者10例 (男性5例, 女性5例, 平均透析歴25.4か月) を対象とした. GAPDならびにHD患者の基礎疾患は全例, 慢性糸球体腎炎である. CAPD患者では心臓超音波検査施行日にα-hANPと限外濾過指数 (UFI) を測定した. HD患者ではHD前後に心臓超音波検査を, またHD前後ならびに次回HD前にα-hANPを測定した. また心エコー図法により左房径, 左室心筋重量を求めた.
以下の結論が得られた. 1. HD患者のα-hANPは健常者, CAPD患者に比較して上昇していた. 2. 左室心筋重量はCAPDとHD患者で増大していた. CAPD患者に比較してHD患者でその増大傾向は顕著であった. 3. 左房径とα-hANPとの間に有意の正相関が認められた. 4. HDによりα-hANPは減少した. α-hANPの減少率と体重減少率との間に有意の相関が認められた. 5. HD後と次回HD前のα-hANP増加率と体重増加率との間に有意な正相関が認められた. 6. UFIの低下しているCAPD患者のα-hANPは高値を示した.
以上よりα-hANPは慢性維持透析患者のドライウエイトの指標になり得るものと思われた. 具体的には, HD後ならびにCAPD中のα-hANP値が50ng/ml以下であればドライウエイトに到達している可能性が高いものと思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top