日本透析医学会雑誌
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腹膜透析患者での心肥大の特徴 -MIBGならびにBMIPP心筋シンチグラムによる検討-
大橋 宏重小田 寛大野 道也渡辺 佐知郎琴尾 泰典松野 由紀彦
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キーワード: 腹膜透析, 心肥大
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2002 年 35 巻 13 号 p. 1557-1561

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抄録

腹膜透析 (PD) は血液透析 (HD) に比較して体液量の急激な変化が少なく, 心機能が低下した透析患者の血液浄化法としてすぐれた方法である. しかしながら, PD患者で心肥大は頻度の高い合併症であり, 心血管系合併症による脱落例はHD患者と同様に多く認められる. 今回, PD患者を対象に非観血的な方法である123I metaiodobenzylguanidine (MIBG) ならびに123I β-methyl-p-iodophenyl-pentadecanoic acid (BMIPP) 心筋シンチグラフィーを施行し, その心肥大の特徴について検討した.
持続携行式腹膜透析法 (CAPD) を中心としたPD患者45名 (平均年齢52.6歳) を対象とした. 基礎疾患は全例, 慢性糸球体腎炎である. また, 心臓超音波検査を行うとともに心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP), 脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP), 遊離カルニチンを測定した.
左室心筋重量の増大しているPD症例は84.4%で収縮機能は比較的良好に保たれていた. 左室心筋重量はMIBGならびにBMIPP心筋シンチグラムの心臓/上縦隔集積比 (H/M) と負の相関を, 年齢, ANP, BNPと正の相関を示した. 心筋シンチグラムでの欠損はMIBGで37.8%に, BMIPPで62.2%に認められた. 広範な欠損 (diffuse defect) を呈するPD症例の左室収縮機能は低下し, とくにBMIPP心筋シンチグラムでdiffuse defectを示した症例で遊離カルニチンが低下していた.
以上の結果より, 心肥大を有するPD患者では心臓交感神経機能と心筋脂肪酸代謝が障害され, 予後に大きな影響を与えている可能性が示唆された.

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