日本透析医学会雑誌
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血液透析患者における家庭血圧測定の意義
栗山 哲大塚 泰史飯田 里菜子松本 啓菅 緑酒井 聡一石川 悦久石川 淑郎細谷 龍男
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2006 年 39 巻 11 号 p. 1511-1518

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抄録

高血圧の診断・治療において家庭血圧 (home blood pressure: HBP) 測定の重要性が注目されている. 本研究では慢性腎不全で血液透析 (hemodialysis: HD) 中の患者106例においてHBPと外来血圧 (office blood pressure: OBP) の両者から血圧管理現況と, HBPの潜在的心疾患や体液量過剰に対する予知能について検討した. 1) HBP (朝) においては収縮期高血圧81.1%, 拡張期高血圧45.3%と早朝高血圧が高頻度にみられた. また, HBP (朝) を用いた収縮期血圧管理区分は, 管理良好群9.4%, 管理不良群65.1%, 仮面高血圧群16%, 白衣高血圧群9.4%と管理不良例が高頻度にみられた. HBP (夜) においても収縮期高血圧58.9%, 拡張期高血圧34.9%と高血圧が多数みられた. また, HBP (夜) を用いた収縮期血圧管理区分は, 管理良好群12.3%, 管理不良群55.7%, 仮面高血圧群13.2%, 白衣高血圧群18.9%と管理不良例が高頻度にみられた. 2) HBP (朝) の収縮期血圧 (150±23mmHg) はHBP (夜) (145±20mmHg) に比べて有意に高値であるが (p=0.0297 by Scheffe's method), OBPの収縮期血圧 (150±20mmHg) とは同等であった. 一方, HBP (朝), HBP (夜), OBPの拡張期血圧は三者間に差異はみられなかった. 3) BNPと収縮期血圧の正相関はHBP (朝) (r=0.249, P=0.0098) とHBP (夜) (r=0.266, p=0.0057) の両者でみられた. 一方, BNPはOBPの収縮期血圧とは関連性がなかった. また, BNPとHBP (朝), HBP (夜), OBPの拡張期血圧との間にはいずれも関連性がみられなかった. 4) ANPは, HBP (朝) の収縮期血圧 (r=0.381, p=0.0112) と拡張期血圧 (r=0.322, p=0.0346) いずれとも正相関した. また, 透析後のOBPは収縮期血圧 (r=0.521, p=0.0003) と拡張期血圧 (r=0.453, p=0.002) ともにANPと良好な相関関係を認めた. 一方, ANPはHD前のOBPとHBP (夜) 両者の収縮期血圧, 拡張期血圧のいずれとも関連性がみられなかった. 以上, HD患者はOBP, HBP両者において高頻度に高血圧がみられることから依然として心血管疾患など高血圧性合併症の大きなリスクを有していると思われた. また, HBPはBNPやANPと関連づけることにより潜在的心疾患や体液過剰の良好な予知因子となり, 高血圧の治療ターゲットとして有用である可能性が示唆された.

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