日本透析医学会雑誌
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反復する腎嚢胞内への出血による血小板減少症に対し, 両側腎および脾摘出術を施行した多発性嚢胞腎血液透析患者の1例
武田 真一宮田 幸雄武藤 重明朝倉 伸司浅野 泰越智 雅典徳江 章彦草野 英二
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2006 年 39 巻 11 号 p. 1525-1529

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抄録

今回, 難治性の血小板減少症に対して出血源と考えられる多発性嚢胞腎を両側とも摘出し, 血小板数の改善をみた常染色体優性遺伝多発性嚢胞腎 (autosomal dominant polycystic kidney disease, ADPKD) 血液透析患者の1例を経験した. 症例は49歳の男性. ADPKDによる慢性腎不全のため血液透析を施行していた. 導入期に薬剤性が疑われた再生不良性貧血を合併し, 頻回の輸血を余儀なくされヘモクロマトーシスに陥った. 頻回の赤血球および血小板輸血にてもヘモグロビン濃度および血小板数の維持に難渋し, 出血傾向のため急性硬膜外血腫も合併した. 原因として, 腎嚢胞内への出血による血小板・血液凝固因子の消費と, それによる出血傾向の増悪が新規の嚢胞内への出血を反復させる悪循環を考え, 両側腎および脾摘出術を施行した. 術後, ヘモグロビン濃度および血小板数は著明に回復し, 血液凝固能検査ではフィブリノーゲンの増加, FDPの減少がみられ, 出血傾向は改善された. さらに, 出血をきたした摘出腎の嚢胞に対して血液凝固能の検討を行った. 摘出した腎の嚢胞を超音波ガイド下に穿刺したところ, 嚢胞液はいずれも血性であったが, エコーパターンごとに異なる血液凝固所見が認められ, 出血の状態によって異なるエコーパターンを呈することが確認された. 難治性の血小板減少症に対して両側嚢胞腎および脾の摘出後に出血傾向の改善が得られ, かつ, 摘出した腎嚢胞液の血液凝固能も解析したので報告する.

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